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熊野本宮語り部の会「坂本勲生会長インタビュー」
神話の時代から神々が鎮まる特別な場所として、憧憬の的になっていた紀伊山地。
この地の霊場と参詣道が世界遺産に登録され、日本全国から、世界からますます多くの人々がこの地を訪れています。途中に出会う卒塔婆や王子に一心に祈りを捧げた先人たちは何を思い、現人(うつしおみ)は何を思い、歩を進めるのか…。
それはきっとこの地に轍を拾った人だけが知り得ること。神々が宿る黄泉の国・熊野へ通じる祈りの道が今ここから始まります。
熊野本宮語り部の会の会長、また
和歌山県内ではたった二人の観光カリスマにも選ばれた、
坂本勲生さんにお話をお伺いしました。
熊野古道をただ歩くだけではわからない、歴史や自然、景観などの魅力を一緒に歩く事で伝えてくれるいわば“熊野古道の魅力案内人”。熊野本宮語り部の会は会長の坂本さんを筆頭に、植物や手話に対応できる人から、大阪や和歌山市に住まいを持ち、語り部を希望し仲間に加わった人まで、多彩な顔ぶれを誇る。彼らがほんまもん体験『熊野古道歴史散策』を行うきっかけとなったのは、世界遺産に認定された平成17年(2004年)。訪れるお客さんの人数に対し、語り部が不足していると県から聞き、熊野古道全体の語り部を養成する講習会を開いたことだった。
熊野本宮語り部の会では、月1回座学を行い、語り部それぞれが時に講師になり、時に生徒になり勉強会を行う。講師として自分の得意分野を説明し、必要とあれば外部から講師を招くことも。こうした座学を年間10回も開き、実地練習も行う。これらの研修会を無断で半分以上欠席したら余儀なく準会員へ降格させられるというから驚きだ。準会員ではお客さんの前では案内はできないのだ。なかなか“語り部”の称号を得るには厳しい道のりだ。
ちなみに、準会員が正会員になるには、ある試験に合格する事が必要である。この試験とは役員全員が審査員となり、言葉の使い方、声の調子、態度、内容などさまざまな角度から“語り部”としてチェックするのだ。合格後、3回以上先輩と共に古道を歩き、
ようやく“語り部”になれるのだ。
世界遺産と一口に言っても、道に看板が出ているだけで、詳細はわからない。「歩いたら単なる山道。これが世界遺産であることを発見するための手助けが語り部の役目」と話す坂本さん。そのためには、季節によって内容を変えて案内する。お客さんによっては花の事を知りたい、歴史の事を勉強したいなど、さまざまな要望が出る。それにも応えられるように努めることが大事だ。加えて坂本さんは「語り部全員がそれらの事をできなければ困る。
だからこそ語り部に求められる事柄が厳しいのだ。うちは特に厳しいんですけどね」と話す。
一旦語り部として案内できても、研修会への参加を怠ると、当然降格である。それは坂本さんであってもしかりだ。"語り部”である事が難しいのに、“語り部”でありたいと願うにはそれだけの理由がある。それは古道の魅力だ。熊野古道の一番の魅力は先人も歩いた自然の素晴らしさ。毎日同じ景色ではなく、毎日違いがあるという魅力。歩いても飽きるどころか心を惹きつけられるばかり。昨日になかった今日の出会いや発見がある。坂本さんは古道を歩きながら機嫌が悪くなることはまずないのだとか。
さらに「お客さんと出会い、いろんな話ができる。お客さんから質問を受け、それに対して1つでも2つでも役立ち、お客さんに理解していただける説明をできる事が一番の魅力だ」。こう話す会長の表情は急に明るくなり、口調にも優しさが滲み出た。
最近は山ガールなるファッショナブルな格好をした女性たちがに対して…と質問を切り出すと、声を上げて笑う坂本さん。
「ファッショナブルな人でも、若い人でも案外勉強したいという意欲がある人が結構いますよ」。
とはいえ世界遺産になった当初は、物珍しさより熊野古道を訪問する人も多かったが、登録後6年経ち、学習意欲を持った人が歩くようになってきたことが古道に関わる職業人には嬉しい変化であったのだそう。だが、多くの人を案内しているうちに悩みも抱き始めた。皆さんが歩く事で土が柔らかくなり、大雨で表土が流れてしまう事や浮石が出てくるのだ。「今、各種企業の職員研修で古道へ土入れをしてくれる働きもあるんです。私ら語り部も一緒に土入れ活動していますし、地元田辺市立三里中学も毎年2回以上土入れしてくれます」と会長。
そこには道を直したり、建設したりする地元の道普請(みちぶしん)として守ってくれた人たちが高齢化し、道普請できない状態になってきているのが大きな理由だ。そもそも世界遺産になった道は、少し前は公道だった。地域の人々は、自分たちが使う道は昔から道普請を行ってきたのだ。今は地元の中学生が行ってくれる。そんな道普請の活動以外にも小学生の語り部の育成も手掛けている。
冒頭に触れた熊野古道を歩く人々は何を思ったのか、坂本さんに尋ねた――
熊野詣を行う人々は現世の利益を願い、死後の極楽浄土を願って歩いていた。そして熊野詣を達成する事で自分が浄土への切符を手にしたと感じられたのだとか。現人は死後の願いよりも現世の事ばかり。少し欲深い気がするが、坂本さんはそれでもなお多くの人々に歩いて欲しいという。「我々が一番期待するのは、日帰りよりも本宮で宿泊して、ゆっくりと熊野古道を歩いていただきたい。後世に熊野古道を伝えるためにはそれが一番大切だから」と会長。
80歳を超えてなお、若者にも負けないくらい、健脚ぶりを発揮する。今日もどこかの古道を心地よいテンポと独特の口調で闊歩し、今日の発見と魅力を、お客さんに語り伝えている事だろう。
《 おすすめモデルコース!》
『熊野古道ウォーキングと熊野三山の旅』 (BT1012)
【串本・勝浦・新宮】
和歌山県田辺市、那智勝浦町、新宮市
古の人々の想いと熊野の様子を語り継ぐマイスターと古道を歩く
熊野古道・歴史散策コース「熊野本宮語り部の会」
【龍神・本宮】
和歌山県田辺市本宮町本宮100-1 世界遺産熊野本宮館内
TEL:0735-42-0735
熊野古道を歩く旅人の強い味方! 中辺路の情報拠点『熊野古道館』
熊野古道館
【白浜・田辺】
和歌山県田辺市中辺路町栗栖川1222‐1
TEL:0739-64-1470