球体にしなくていいんです。心を磨くように、気持ちが丸くなるようにと念じながらですよ
奥の院に程近い場所で念珠作りを教えている光木阿字館の中前さん。高野山で念珠作りとは何とも雰囲気にぴったりである。だが、そんな軽い発想から体験が始まったわけではない。
一般的に言われる「いつまでもあると思うな親と金」。これに当てはまる出来事が中前さんの身にも起こった。父親が急に亡くなったのだ。今から約14年前の事。それから3年経たある日、父が大切に保管していた貴重な霊木を発見した。そこでこの木を使って念珠を作れば、父親だけでなく先祖の供養にもなるのではないかと考えたのである。
亡き父の導きか弘法大師の導きか、折良く生前、父から木工の手作業などを教えてもらい世話になったという数珠屋さんより昔ながらの数珠の作り方を教そわることに。こうして数珠作りは始まったわけだが、霊木を球状にする作業は至難の業。木工を使い建具や小物を作る家業だったので四角に切る道具はあれど、球状にする道具はない。そこでサウンドペーパーで何度もこするなど、聞いた話を参考に、手探りで少しずつ珠を丸く磨いていった。