
「子供たちは波が少し荒れているぐらいの方が喜んでいる。」
増井さんの話し方は言葉のセンテンスは短いが、一言一言をじっくり吟味するような話し方だ。
決して話し上手ではないが、心がこもっている分聞き取りやすく、私の心にストンと入り込んでくる。
当初は先生方の回遊体験として、土日開催を基本に体験を始めた。その前は南紀熊野体験博で実施。2年前『最南端メモリアルクルーズ』と名前変え、本格的にスタートした。地元の子どもたちが知っている海の楽しさ、美しさ、厳しさを、都会の子どもたちにも体験してもらいたい。この思いが事の発端だ。やるなら魚を食わず嫌いな子に、体験を通じて少しでも解消してもらい、食育の勉強にもなれば…と要望に応じて、実際に魚に触れ、の捌き方も体験してもらうことに。そして、体験に携わる漁師や養殖業を営む地域の人々に、いくらかの収入になればと。
「魚を捌く体験の時、違和感を覚えたのでよく見ると、習っている高校生が皆包丁を左手に持ってたんや。教えた人が左利きやったんで真似したんやなぁ」。
増井さんにとっては、衝撃的だったに違いない。だが今、私の前で増井さんは無邪気な笑顔を見せた。
増井さんは一通り体験内容を語ってくれた後、現状抱えている後継者問題についても触れた。
「後継者については、現状1人で船に乗ってする引き縄をできる者がいない。平均年齢は70から75歳くらいかな。70歳ならバリバリやれるよ。でもそんな人たちは、他のタンカー船に乗って退職した人。生粋の漁師は10人もいない。漁師は博打性があるからお金が貯まらない。釣って儲けたらすぐに使ってしまうからなぁ」。